資金繰りの失敗を防ぐ7つの鉄則(1)
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「資金繰りの失敗を防ぐ7つの鉄則」を、より多くの方に ご覧いただけるよう、ホームページ上に掲載したものです。
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お急ぎの方は 「資金繰りの失敗を防ぐ7つの鉄則」(2) へどうぞ。
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このレポートをご覧になっているということは、今あなたは、経営する会社の 資金繰りで、大きな不安をかかえているのかもしれません。
「このままでは資金繰りがもたないぞ。どうすりゃいいんだ」
「いつも資金繰りのことで頭がいっぱいで、何も手がつかない」
「もう資金繰りに疲れ果てた。なんでもいいから早く楽になりたい」
私も以前、中小企業を経営していたことがありました。
今、上に書き出したことは、資金繰りに悪戦苦闘していた当時の、私自身の気持ちです。
資金繰りの苦しみは、実際に体験した者にしか理解できません。
押しつぶされてしまいそうな重圧、焦り、不安。
すべてを失ってしまうのではないか、という恐怖・・・。
ですから、もし、今あなたが資金繰りに苦しんでいるなら、あなたの気持ちは手に取るようによくわかるし、とても人ごととは思えません。
私が社長をしていた時、私は資金繰りに関しては全く孤独でした。
大手都市銀行出身の経理部長がいて、元銀行員らしい保守的な(よく言えば堅実な)仕事ぶりでしたが、「打てる手はすべて打つ」という、会社の存亡をかけた非常時の資金繰りには、全く対応できませんでした。
実は、この経理部長の前任者も金融機関(信用金庫)出身者で、当時の私は、経理や財務は、金融機関出身者が良いと思っていたのです。
(そう考える経営者は、今も多いのではないかと思います)
しかし、この二人の経理部長が、資金繰りに関して、社長である私を支えることはありませんでした。
なぜでしょうか?
理由は簡単です。
彼らは、『自分自身で資金繰りをやった経験がなかった』からです。
「元銀行員なら、資金繰りの経験がなくても資金繰りはできるだろう」と 思われる方も多いと思います。
当時の私もそう思っていました。
しかし、長年金融機関に勤務し、リスクは極力避けるという習性が身についてしまったのか、二人の経理部長は、まるで口をそろえたようにこう言ったのです。
「提出された資金繰表をチェックするのと、自分でゼロから資金繰表を作るのでは全く違います。会社の実情に合わせて資金繰りを組んだ経験がないので、自信がありません」
実は、こう言われて、当時の私は「やっぱりそうか」と冷静に受け止めていました。
というのも、金融機関出身者を経理部長に採用して最初に驚いたことが、「仕訳」ができなかったことだったからです。
彼らは財務諸表の分析はできても、経理の実務はやったことがないというケースが多く、少し複雑な仕訳になると、会計事務所に問合せるような状態だったのです。
一人目の経理部長は信用金庫出身者だったので、人材のレベルアップを狙って二人目は大手都市銀行出身者を採用したのですが、状況はほとんど変わりませんでした。
結果として、金融機関出身の経理担当者がいるにもかかわらず、資金繰りは社長である私がやらざるをえず、私の頭の中には常に資金繰りがある、という状態でした。
社長が一人で資金繰りに孤軍奮闘している会社は、今もかなり多いと思います。
ひょっとすると、このレポートを読んでいるあなたも、当時の私と同じ状況ではありませんか?
はじめまして。
資金財務研究所の水口です。
「経営者は孤独である」とよく言われますが、特に資金繰りに関しては、本当に孤独です。
あなたの会社の資金繰りが苦しくなった時、あなたは誰に相談しますか?
「社内が動揺するから従業員には話せない」
「心配させたくないから家族には相談できない」
「みっともないから親戚にも相談できない」
「噂になると困るから経営者仲間には相談できない」
「会計事務所に資金繰りのことなんかわからない」
・・・・・・・・・
「結局、誰にも相談できない」
そうなんです。
「資金繰りが苦しい」という相談ができる相手がいない、という社長はとても多いのです。
誰にも相談できずに一人で思い悩み、自ら命を絶ってしまう経営者が後を絶たないことからも、それがよくわかります。
私の場合、バブル崩壊の直撃を受けて経営していた会社の売上が急減したところに、監督当局の指導により銀行が貸出抑制姿勢に転じたため、資金繰りが一気に詰まってしまったのですが、まっさきに相談したのは、会社の実情を把握しているはずの顧問税理士でした。
今でも、最も身近な専門家である顧問税理士に相談する社長が多いのではないかと思いますが、一度相談すると「相談する相手を間違えた」と感じる方が多いようです。
私の場合もそうでした。
なんとか会社存亡の危機を乗り越えたいと相談しているのに、
「うーん、厳しい状況ですねえ・・・どうしたらいいんですかねえ・・・私は資金繰りのことはよくわからないんですよ・・・いよいよの時には弁護士を紹介しますから」と言われ、びっくりするやらあきれるやら。
その後、都内のコンサルティングファームで、経営コンサルタントとして 中小企業の社長の相談を受ける中で
「会計事務所に資金繰りのことなんてわからない」
「会計事務所に資金調達の相談をしたってムダだ」
という声を何度となく聞きました。
私は、会計事務所や税理士の先生の悪口を言っているのではありません。
今はよくわかるのですが、税理士の先生に、資金繰りや資金調達の相談をすることに、そもそも無理があるのです。
税理士というのは、「税務」つまり税金の専門家です。
この「税務」というのが膨大かつ複雑な上に、税制改正で毎年内容が変わるというやっかいなものなので、税理士という税務の専門家がいるわけです。
ところが、「税務」と「資金繰り・資金調達」というのは、全く分野が違います。
法人税や消費税にどれほど精通していても、資金繰りや資金調達ができるわけではありません。
資金繰りや資金調達にはそれなりの経験が必要ですし、税理士の先生にとっては、「税務を的確に処理する」ことこそが、最も重要な使命なのです。
こう考えると、いくら身近だからといって、顧問税理士に資金繰りや資金調達の相談をするのは、少々お門違いであることがわかります。
さて、こうなると、中小企業の社長は一体誰に相談したらよいのでしょうか・・・?
私は自分の会社が経営危機に陥った時、懸命に資金繰りを続けながら、資金繰り・資金調達の専門家を探しまくり、「資金繰りに強い」と言われていた、たくさんの専門家にお会いしました。
公認会計士、税理士、中小企業診断士、行政書士、経営コンサルタント・・。
いろいろな専門家に相談してみて気がついたのは、「資金繰り・資金調達の実務経験がある人は、ほとんどいない」ということでした。
「資金繰りに強い」という専門家のほとんどは、本やセミナーで勉強したり、自分が手がけた相談案件を通じて「学習」し、資金繰りや資金調達の知識を習得した、という人ばかりだったのです。
『経験に勝(まさ)る知識なし』という言葉がありますが、「資金繰り・資金調達の勉強はしたが経験はない」というのでは、どれだけ立派なことを言っていても、文字通り「机上の空論」に過ぎません。
『百聞は一見にしかず』のことわざ通り、「100冊の本の知識」より「1回の経験」の方が、はるかに価値があるというものです。
「100冊の料理書を読破したが、料理は1度も作ったことがない」という人に、料理を教わりたいと思う人がいるでしょうか?
「資金繰りの実務経験がない専門家」は、「料理を作ったことがない料理 研究家」のようなものです。
そう考えた私は、「実務経験を持たない、知識のみの専門家に相談しても意味がない」と判断し、自力で経営危機を乗り切ろうと腹を決め、あらゆる選択肢を検討しつつ、全力で危機の克服に取り組みました。
語り尽くせないほどいろいろな経緯がありましたが、結果として、私は主要事業を同業大手に事業譲渡し、私自身は、都内コンサルティングファームで、経営コンサルタントとして再出発しました。
事業の一部は整理しましたが、主力事業は他社に引き継がれて継続できたので、他のコンサル会社のように「事業再生に成功した」とアピールして事業再生を「売り」にしてもよかったのかもしれません。
しかし、私自身は「自分の資金繰りの実戦経験を中小企業支援に役立てたい」という思いが強かったので、コンサルティングファームでは、「資金繰り・資金調達」の分野を重点的に担当しました。
私が所属していたコンサルティングファームには20名ほどの経営コンサルタントがいましたが、その半数は金融機関出身者でした。
元A都市銀行支店長、元F都市銀行融資課長、元D地方銀行融資担当者、元S信用金庫渉外係、とさまざまな経歴のコンサルタントがいましたが、それだけのスタッフがいるにもかかわらず、「資金繰り・資金調達」の相談案件は、私がメインで担当していました。
なぜだと思いますか?
「資金繰りで苦労した経験者でなければ、経営者の痛みは理解できない」
「自分で資金調達をしたことがある借入経験者の方が、借り手である経営者の目線に立てる」
というのが、自分も資金繰りで苦労した経験がある、コンサルティングファーム代表の考え方で、資金繰り経験もなく、住宅ローンしか借りたことがない金融機関出身者よりも、資金繰りの「実戦経験」がある私の方が、資金繰り・資金調達案件には適任と判断したのだそうです。
同僚である金融機関出身者も、「資金調達なら俺に任せろ」という人は誰もおらず、「自分がいた当時の出身銀行のことならわかるが、銀行業界は変化が早いから、現在のことはわからないし、他行のことはもっとわからない」と口をそろえて言うので、金融機関出身者は資金調達のプロに違いない、と思っていた私は、大変驚きました。
おかげさまで、コンサルティングファーム時代は、多くの中小企業の資金繰りをサポートさせていただき、私の資金繰り経験にも、かなりの幅と厚みが加わりました。
サポート先企業の中には、「財務担当執行役員」として長期にわたって資金繰り全般を任され、累計30億円を超える資金調達を実現した企業もあります。
現在も私は、私自身が最も苦労し、そして今も多くの社長が苦労している資金繰りをサポートする仕事を、メインの業務にしています。
その理由は明快です。
ひとつは、私自身のキャリアの中で、「資金繰りの実務経験」が最も豊富だからであり、もうひとつは、私自身が味わった「資金繰りの重圧・負担」から、中小企業の社長を解放することこそが、私の使命だと思っているからです。
以前は、ご要望が多かった「資金調達コンサルティング」を中心に手がけていたこともありましたが、せっかく資金調達をしても資金繰りがきちんとできていない会社が多く、すぐに追加資金が必要になる、という悪循環に陥るケースが少なくなかったので、資金繰りそのものをサポートすることにしたのです。
資金繰りに失敗し、資金繰りが回らなくなった時、会社は倒産します。
資金繰りが回りさえすれば、赤字であろうが債務超過であろうが会社は潰れません。
ですから、「資金繰りサポート」というのは、言い換えると「倒産回避コンサルティング」ということで、これを「事業再生コンサルティング」という表現でアピールしているコンサル会社も少なくありません。
ただ私は、いつも中小企業の社長の身近にいて、社長の最強のサポーターとして資金繰りを支えたい、という思いをこめて「資金繰りサポート」と言っています。
私のコンサルティングスタイルは、他のコンサル会社のように、社外から評論家のようにあれこれ助言するやり方ではありません。
自分の仕事に責任を持つために、サポート企業の中に身を置き、腰を据えて最前線で実務処理にあたります。
「外部からの助言」では、自分自身に火の粉がふりかかる心配はないわけですから、口先でどれほど「貴社を全力で支援」と言ってみても、所詮は「他人事」です。
社内で担当者として最前線に立って初めて、「我が事」になるのです。
軍隊に例えれば、安全な参謀本部にいるのではなく、砲弾が飛び交う最前線で戦うというスタイルです。
リスクを避けて「参謀本部」で仕事をするコンサルタントが多い中で、これまでもずっと最前線にいたせいでしょうか、今も最前線で戦い続けています。
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